翌朝、朝食を済ませるとお出かけの準備に公爵家のメイドたちがメイクにお着替えにと奔走している。

 私の部屋ではお出かけの準備に三人のメイドがあれこれと世話をしてくれている。
 そんな準備をソファーから嬉しそうに眺めてあれこれ指示しているのは、リリエラ様だった。

 「今日のハルバートは紺のジャケットに紺のトラウザーズにウエストコートは若草色の刺繍だったわね」

 そんなリリエラ様の言葉に、メイド頭のメリンダは衣裳部屋から深い緑に金糸で蔦刺繍の施されたドレスを持ってきて鏡の前に立つ私にあてがう。

 「大奥様、これが今日の旦那様とは色合いが取れるかと存じます。落ち着いて大人の雰囲気に少しの華やかさが入る刺繍がアクセントになるかと」

 メリンダの言葉に頷くと、私はそのドレスへとお着替えが始まる。

 シュミーズとドロワーズ姿の私にドレスを着せていく。

 今回のドレスは生地も軽やかで光沢があり、スカートのボリュームも控えめなものでお出かけに着ても服が重くて大変とかにはならないだろう。

 足元の靴も同じ光沢感のある緑の靴で、日傘は白のレースの縁取りのあるもの。
 小さな手提げも日傘と同じレースを使ったものになった。

 「大奥様、お飾りはどういたしましょう?」

 着替えも終わり、メイクをされている段階でメリンダとリリエラ様が後方で話し合っているのはお飾りだそう。

 お買い物に少し出かけるだけなのに、お飾りなんて必要だろうか?
 私の疑問は表情に出ていたようで、リリエラ様は言った。
 
 「身に着けるもので、お店側もこの客ならこれを買うかもと購入する品を吟味して出してくるのよ。 公爵家の婚約者ですもの、見合うものを身に付けましょう。これも慣れですよ」

 リリエラ様は、今後のことも考えてそう言ったのだろう。