今、自分の置かれている状況に、頭がついていくことができないでいる。
朝の校舎裏。目の前には、作りものかと思うほど綺麗な顔をした男の人。
その人が、私を見つめてこんな言葉を口にした。
「好きです。俺と付き合って」
これって……告白?
遡ること10分前。
いつものように登校し、教室に入ろうとしたとき、私を待っていたらしいこの先輩……瀬名湊先輩。
「ちょっと話あるんだけど、一緒に来てくれないかな?」
そう声をかけられ、いったい私は何をしでかしたんだろうと、内心ヒヤヒヤしながらついてきた。
だけど、まさか告白だとは思わず、先輩の言葉に耳を疑ってしまった。
どうして……私?
先輩と私は、今まで何も関わりがなかったはず……。
それでも瀬名先輩の名前を知っていたのは、私が人の名前を覚えるのが得意だった……というわけではなく、ただ彼が……疎い私でも知っているほどの有名人だから。
この高校で、彼を知らない人はいないと断言できる。
入学してから常に首席をキープしている、創設以来の優等生であり、現生徒会長。