それは、ある平和な日曜日のことだった。

――ガチャリ。

お母さんと一緒に、和やかな休日を過ごしていたとき、玄関のほうから聞こえた扉が開かれる音。


「あら? 誰かしら?」


お母さんの言葉に、私も首を傾げる。

誰……?

お父さんは単身赴任中で今日帰ってくるはずがないし、訪問者が来る予定もない。

なんだか怖くて動けずにいると、おぼつかないような足音が近づいてくる。恐る恐る、足音が聞こえてくるほうを見る。
すると……。


「た、すけて、くれ……」


私と瓜二つの顔をした足音の主が、リビングに入るなり倒れ込んだ。


「え……? お、お兄ちゃん……!?」


ど、どうして家に……!?

顔を真っ青にしている双子の兄に、慌てて駆け寄る。


「ひ、日奈子……」


ぐったりとした様子で、まるで最期の力を振り絞るかのように、言葉を発したお兄ちゃん。


「頼む……。1週間だけ、俺の代わりにうちの高校に通ってくれ……」


――これが、すべての始まり。