「……え、ここですか」


到着したのは、車のフロントガラスから見上げてもてっぺんが見えないほど高いタワーマンションだった。しかも優莉のアパートから五分と走っていない。
吸い込まれるようにして地下の駐車場に入っていく。


「近くだったんですね」


ポカンと開いた優莉の口から言葉がこぼれる。

だから帰り道に火事に気づいたわけだ。

高層階に向けてエレベーターがぐんぐん上がっていく。階層の表示が三十五でポンと軽い音を立てて止まった。
分厚い絨毯が敷き詰められた通路をキョロキョロしながら進む。隼がいきなり立ち止まったため、惰性でその背中にぶつかった。


「――すみません」


急いで一歩足を引き、肩越しに優莉を見た隼に謝る。


「今さらなのですが、彼女さんは大丈夫ですか?」