僕には昔『ニナ』という女の子の友達がいた。

彼女と友達になったのは中学に入ってすぐの頃だろうか。

ある日教室に入ると、真っ白な髪と肌をした少女が突然現れて僕に笑顔で告げた。

「おはよう、想太。もう少しで遅刻するところだったね」

「君は……誰？」

「私？ 私はニナだよ。今日からあなたのお友達になったの」

「それは誰が決めたの？ 先生？」

「そんなわけないじゃん。私が決めたんだよ」



そう言って、ニナは鈴を転がすような声で笑った。

「だから今日からよろしくね、想太」

「う、うん。よろしく」



彼女に流されるままに僕は頷いて、席に着いた。

隣を見ると、もうすぐ授業が始まるのにニナがすぐ側に立っている。

「あの……そろそろ自分の席に着かないと授業が始まっちゃうよ？」

「自分の席？ そんなの私には無いよ？」



不思議そうな顔をしてニナが首を傾げた。

「それに私は想太の友達だから、離れるわけにはいかないでしょ？」

「友達だからってそこまでしなくても」

「ううん、ダメだよ。ただの友達じゃなくて私は『唯一のお友達』でしょ？」



授業の準備をしていた、僕の手が止まった。

「ニナが……唯一の友達？」

「そうだよ。だから私がこうして想太の隣にいることは凄く当たり前のことなの」

「君が唯一のお友達だって誰が決めたの？」



するとニナは、ニッコリと微笑んでこう答えるのだった。



「もちろん私だよ」