トコトコトコ…。

一人の足音が聞こえる。

いや、実際歩いているのは二人なのだが。

一人は髪を一つに結った町娘。

もう一人…足音がしなかった方は
ネックウォーマーとフードで顔を隠している。

その理由は一つ。

お尋ね者の殺人鬼だからだ。

キリ、と呼ばれている殺人鬼。

その由来は「斬り」と「霧」をかけた物らしい。

霧、なのも訳があり、
刃を振るうのが早過ぎて霞む霧に見えるからだ。

…本名は誰も知らない。


「あ、そういえばさ〜」


キリは町娘に声をかける。

町娘は不機嫌そうにキリを見る。


「何?馬鹿殺人鬼。」


「人前では殺人鬼って言わないでね?
 君の名前って何?」


「…ツバキ。」


「へぇ〜」


「聞いといてその反応…。」


「何か言った?」


「…何も…。」


逆らうと厄介なので何も言わないでおくツバキ。


「あ、ボクはそのままキリでいいよ」


「そう呼ぶつもりだから安心して」


何故かすごく不機嫌そうなツバキ。

それもそうだろう。

たまたま迷い込んでしまったところに

たまたま世界で噂の殺人鬼に遭遇し、

たまたま殺人鬼の気まぐれで同行する事になってしまったのだから。

それはもう最悪でしかないだろう。

いつ死んでもおかしくないこの世界で
最低最悪のこの殺人鬼に会って仕舞えば。

もう死んだも同然なのだ。

ん?何々、この世界は何で滅びたか?

ふむ、それでは一つ昔話をして見せよう。