伊織にすがって、断片的な快感に酔って
心の奥底では自分自身をひどく冷酷視している。
「…っ、もっと…。もっとして…っ」
「あんまり急ぐと紗和の身体が傷ついちゃう。ちゃんと俺はここにいるから」
お風呂から上がって、身体を拭く間もなくベッドの上に居た。
濡れた身体のまま、色欲の薫りだけをのこして。
最初は戸惑っていたけれど
優しい瞳で、穏やかな声色で、包み込むような手つきで
わたしに触れる伊織を、声が枯れてもなお求め続けた。
「ん、…やぁ…っ…!」
「嫌なの?じゃあやめよっか」
「…っちがう、…っ」
「うん、分かってるよ。――…もっと気持ちよくなろうね」
いつもなら甘い夜は
いつわりの甘さを伴ったまま、ほろ苦く更けていった――…。