「あの、ふつつかモノですが、末永くよろしくお願いいたします」


はあ、噛まずに言えた、よかったー。


ヨーロッパ製のお洒落な家具が置かれている彼の部屋は、とても広くてなんだか落ち着かない。


天井には豪華なシャンデリア、床にはふかふかの絨毯、アロマのようないい香りのする室内。


まるで、異世界に迷い込んだ小さいネズミになったような気分。


キングサイズのベッドの隅っこで、小さくなりながら深々と夫である彼に頭を下げて、ご挨拶をした。


一足先にベッドに入り、本を読んでいた彼からは返事がない。


寝間着姿で、本に視線を落とす彼の上品な顔立ちに思わず見とれそうになる。


そう、私は今日からこの人の妻になるのだ。


艶やかな黒髪は、前髪が少し長くて彼の綺麗な顔立ちに似合っている。