「親の目がないって自由でいいよねぇ」


昼休憩の時間、1年A組の教室でそう言ったのは友人の平方亜沙美(ヒラカタ アサミ)だった。


亜沙美は長い髪の毛をポニーテールにして赤いリボンを付けている。


「そうだよね。この学校全寮制だし、実家も遠いからあたしたち遊び放題だもんね」


あたし、門脇知枝(カドワキ チエ)は亜沙美の言葉に頷いて答えた。


ここ、山野高校に入学した友人は亜沙美だけじゃなかった。


同じクラスの野守瞳(ノモリ ヒトミ)。


土川真仁(ツチカワ マサヒト)。


間宮友樹(マミヤ ユウキ)。


大岸優歩(オオキシ ユウホ)。


も、あたしたちと同じ中学出身だった。


ろくに勉強してこなかったあたしたちでも入学できるくらい、学力の低い高校というわけだ。


「瞳はどこに行ったの?」


亜沙美が思い出したようにそう言って、教室内を見回した。


教室内に瞳の姿はなく、優歩の姿もなかった。


「また2人でトイレに籠ってるんじゃないの?」


あたしはニヤついた笑みを浮かべて答えた。