「……ごめん、俺ーー」
いつから出ていたかも分からない涙を拭いながら謝る。
「仕方ないっすよ。俺も一瞬泣きそうになったくらいですから。
菜摘を誰より想ってる俊太郎さんはもっとキツいんだろーなって。」
さらりと、爆弾を投下した恭弥に俺は息をのみ、綾羽ちゃんは泣きながらだけど顔を上げた。
「恭弥、お前…」
「分かりますって。そのくらい。」
さらーっと、流された俺は思った。
こいつら、俺より年下なのに、全然そう思えないんだけど。
「……あのーーっ」
そのとき、曲がり角の影から1人の細い少年が顔を出した。
俺たちは同時にその少年の方を向き、息をのむ。
いつの間にか、俺らの近くに立っていたその少年は、とても美しくとても儚げで、微笑むと同時にふわっとどこかへ行ってしまいそうな少年だった。
「…菜摘の、知り合いですよね。すいません、部屋まで声が聞こえて…。」
申し訳なさそうに笑う少年に、俺らはすっと現実に引き戻される。