「立花は、勉強はどうだ、問題ないか?」
クラスの様子にはノータッチだけど、基本的に面倒見の良い担任の先生。
職員室に向かう途中に訊ねられ、私は隣に並ぶ。
「今のところ、問題ないと思います。もう少し数学詰めたいな〜って感じですかね」
「そうか、まぁ立花は心配してないけど」
にかっと、爽やかに笑う先生。
それに対して私も口角を上げて、ちょうど到着した職員室へと足を踏み入れた。
「そういえば、阪本はどうだ?」
私達5人は全員同じ志望校。
その中で唯一ボーダーに乗れていない晴樹の心配が先生の口から出る。
その辺で、私は嫌な予感を感じ、ノートを受け取ろうと手を前に出すも、先生の手からはノートはまだ離れない。
「晴樹は、ちょっと心配ですけど、頑張ってるみたいですよ」
にこりと、愛想笑いを作り、話を終わらせようとする。
「そうかそうか、お前らちゃんと教えてやれよ?小泉も理数系は苦労してないって聞いてるしなぁ、」
だけど、私の嫌な予感は的中し、先生はペラペラと話を続け始めた。
「清水は…」
「夏目は…」
私の周りの友人から派生してクラスメイトの名前が次々と登場し、私が引き攣った愛想笑いをキープ出来なくなった頃、
始業のチャイムが鳴り響く。
「あ、しまった、次の授業だ。えーと、このノート頼むな。」
チャイムが鳴ってからじゃ遅いんですよ〜。
そんな文句を聞く暇もなく、あっという間に授業へ向かった先生。
私は溜息をついて、職員室をあとにした。