私は長い間そこに立ち尽くして、
その後、ふたりを追うことなく、自分の病室へと戻った。
…現実から、目を背けてしまったんだ。
「…あっ、菜摘……。」
急に飛び出していった私が気になったんだろう。
病室には、まだお兄ちゃんが残っていた。
事情を聞こうとしたお兄ちゃんだけど、私の様子を見て、口を閉ざす。
私は、そんな様子に気づかないふりをしてベッドに潜り込んだ。
「菜摘、」
「ごめん、お兄ちゃん。今日は帰って。」
声をかけようとしてくれたのに対して、冷たく言い放つ。
「また来るな。」
そう小さく声をかけて、お兄ちゃんは病室を出ていった。