──あれから──

 潮風に波の音が心地いい穏やかな昼下がり。
「パパ。僕、大きくなったらヒーローになる」

 パパによく似た夏輝(なつき)がポーズを決めて、勢いよく回ったり、野外ソファから跳びはね、空中へ飛び蹴りをお見舞いしている。

 運動神経のよさと、瞬発力の高さは父親譲りね。

「それでね、僕ね、ママを守るんだ」

 ヒーローになって、私を守ってくれるの?

 嬉しくて浜辺に視線を馳せると、デッキチェアに座って、くつろぐパパの膝のあいだに夏輝が入るのが見えた。

 まるで子犬みたいに、パパの膝にまとわりついて。

 パパと夏輝の隣では、ホワイトシェパードのシェードが、穏やかなまなざしで夏輝をじっと目で追って見守っている。

「昨日は、大きくなったらパパみたいに、たくさんの馬と走るって言ってなかったか?」

「昨日は昨日、今日は今日。僕、やっぱりヒーローになるよ、スパーキーとスターリーは可愛い子分」

「可愛い子分か、それならシェードは?」
 笑いながら、小首を浅く傾げたパパに夏輝が即答した。

「僕の大切な相棒」
 最近、ふいに、おとなびたことを言うから、思わず吹き出しそうになる。だれに似たのかな?

 木陰でくつろぐスパーキーが、気持ちよさそうに目を細めながら、喜びの表情を見せている。

 今日は、夏輝の四歳の誕生日。あの夏みたいに輝いた日に、私たちのもとに生まれてきた。

「夏輝、ママのお手伝いしよう」
「はい!」

「ありがとう、夏輝はサラダを持って行って、ママはハンバーグとから揚げね」

「夏輝の大好きなフルーツケーキは、パパが持って行くよ」

 先頭を行く夏輝がサラダを置くと、私の持っているトレーから、真剣な顔でから揚げを手に取り、ガーデンテーブルに並べた。

「パパも夏輝もいつもありがとう。ママ、とっても助かってるの」

「僕、男だよ、ママの喜ぶ顔が見たいんだ。ママが嬉しいなら僕も嬉しい」

「どこかで聞いたセリフ。ね、パパ、どう?」
「夏輝にセリフを取られちゃったね」
 見つめ合う私たちは、二人に通じる心の会話で微笑み合った。

 夏輝がキッチンに走って行き、二つの調味料入れを手に取り、テーブルに置いた。

「パパが、初めてママにプレゼントしたんだよね」
 想い出のミルク缶の形の調味料入れ。

「持って来てくれてありがとう、嬉しいな」

 夏輝を抱き締めると、私の首もとに、柔らかな頬をくっつけて、抱き締めてくる。

 また、ちょっと背が伸びた? 毎日、幾度となく抱き締めていて、夏輝の成長を日々頼もしく感じる。