玄関ドアを開けると、外廊下からさわやかな風が通り抜け、別格な気持ちよさに包まれた休日の朝。

 ロゴ入りのTシャツにジーンズ、ショートブーツを履いて、チェックの赤シャツを羽織って準備万端。

 秋の始まりを待ちきれないように、涼風が清らかに頬をくすぐる中、マンション前に伽瀬田さんが車で迎えに来てくれた。

 車から降りてきた伽瀬田さんは、カーキ色のシンプルなTシャツに硬めのブルージーンズ。

 ベルトのバックルは雄々(おお)しくて、薄く柄が入っているネイビーのシャツで、今日は武骨なイメージ。

「おはようございます。よろしくお願いします」
「おはようございます、せっかくの休日に朝七時は早かったですかね」
「いいえ、大丈夫です」
 夜はオフだったから、ゆっくりとしていたって。

「昨日はいっしょにお買い物に付き合ってくださってありがとうございます」
「ブルージーンズ、似合っていますよ」
「ありがとうございます」
 直射日光を肉眼で見るより眩しくなる笑顔を向けてくれるから、目を細めて微笑んだ。

 今日も後部座席のドアを開けて、私を導く。なんの曇りもないさわやかな笑顔。
 車窓から見える左右の景色は、瞬く間に流れて行った。

「寒くないですか?」
「ありがとうございます、大丈夫です」
 乗車すると、毎回聞いてくれる心遣いが嬉しく感じる。

「ミルク缶の形の調味料入れもありがとうございます。昨日、さっそく夕食で使わせていただきました」

 昨日、二人で入った雑貨屋さんで手に取って眺めていたら、視線を感じるから見たら伽瀬田さんが笑みを浮かべて見つめていた。
『嬉しそうですね』ってプレゼントしてくれた。

「とても気に入ってます。食卓が可愛くて、食事が楽しいです」
「よかった。料理も美味しかったでしょう。得意料理はなんですか?」

 ちらりと見てしまうバックミラー越しの瞳からは、輝きが溢れているみたい。きらきらしている。

 それからは、ふだん作っているメニューとかレシピを聞かれたり、お互いの昨日の夕食の話をした。

 車は都市部から走りつづけること一時間くらい。畑地を抜け坂道の角度が変わると、生い茂る木々が濃く鮮やかな緑に染まって、視界いっぱいに広がった。

「つきました」
 後部座席のドアを開けてくれて、手を差し出された。
「あ、ありがとうございます」
 手を差し出されるのは、これで三回目だけれど、まだ慣れない。

 伽瀬田さんの手のひらに指先を重ねると、どきっとする。
 まともに温かな伽瀬田さんの温度を感じてしまうから。

 恥ずかしくて、俯くと伽瀬田さんのブラウン色のワークブーツが目に入った。

 穏やかなでソフトな雰囲気の伽瀬田さんが、野性的なブーツって、ギャップにどきどきしてしまう。

 スパーキーのいる乗馬クラブは、ご多分に漏れず高原地方にある。

 広大な敷地内にある駐車場からクラブハウスへ到着すると、フロントに寄ってからロッカールームに荷物を預けた。