【中矢裕side】
3ヶ月が経って少し肌寒くなってきた。
叶夢も寝返りを打ったり数歩匍匐前進したり成長している。
「叶夢〜」
「うあー」
李那が呼んで叶夢が李那を探して匍匐前進。
もう見慣れた光景。
李那の体は徐々に蝕まれて行く。
立とうとしただけで腕の力が抜ける時がある。
「あー」
李那のところまで行って抱っこをせがむ叶夢。
「…だんだん言葉話すようになるね。」
「そりゃあそうだろ。」
李那は最近窓辺で遠くを見つめるようになった。
ぼーっとした感じ。
叶夢の声でハッと我に返っている感じだ。
李那のお母さんからも少し心配そうに相談を受ける時がある。
「…裕くん…」
「はい。」
今日も李那のお母さんに呼ばれて廊下へ行く。
「ずっと家の中にいるからなのかもしれないけど、あの子顔色悪いのよ。」
「…まあ、それは俺も感じてましたけど…」
「気分転換に2人で散歩でも行ってきたら?
叶夢は私が見てるから。」
…確かに、李那の気分転換になるかもしれない。
「今から連れていきます。」
「分かったわ。叶夢はおばあちゃんが見てるわね。」
ふふふっと笑いながら叶夢の元へ歩いていく李那のお母さん。
「李那。」
「…ん?」
「散歩でも行くか。」
「え?」
李那のお父さんから外用の車椅子貰ったんだよな。
これで外へも行ける。
「…まあ、いいけど。」
よっこいしょって立ち上がろうとする李那を止めて、外用の車椅子のある玄関まで行く。
李那にとっては玄関自体久しぶりだろう。
「ん、移動完了。」
「さすが介護士。」
介護士自体はまだだっつーの。
就職先が介護ってだけだ。
寧ろ李那で練習している感じだ。
「行くぞ〜」
「うん。」
玄関を開けると外に出た。
李那は久しぶりの外に少し喜んでる。
ウキウキ気分なのが見て取れる。
なんの宛もなくフラフラ歩いていると海澪ちゃんと柊と遭遇。
「あ、リア充がいるよ、裕くん」
「そうだな、リア充がいるな。」
じどーっと海澪ちゃんと柊をみつめる李那。
その視線に気づいたのか海澪ちゃんがこちらまで来る。
「ちょっと李那!何その目!」
笑いながら李那に抱きつく海澪ちゃん。
「なんか青春してるなあって。」
「まあね。」
久しぶりの海澪ちゃんでもある。
李那はやっぱり嬉しそうに笑う。
…そういえば最近蒼空見ないな…
海澪ちゃんが車椅子を押して近くの公園に入っていく。
楽しそうに会話する声が聞こえる。
…うん、やっぱり連れ出して正解だったな。