七月七日……の、三日前。


「織姫さま、危のうございます。そんな川辺にいらっしゃらず、こちらへ」


そう言って私を部屋の中へ入るよう呼び止めたのは、私の世話役の女中。


「もうすぐ七夕だけど、今年はちゃんと晴れるのかしら?」

「ええ、晴れますよ、きっと。ですから姫さま、こちらへいらして下さいませ」


あなたは去年もそう言ったわよ。
そして去年はそのまま会えなかったのだけれど。


私はさらさらと流れる川をじっと見つめる。青々と透き通る川底にはキラキラと光る星貝がたくさんちりばめられていて、私がそのひとつを取ろうと川のもっとそばまで歩み出すと……。


「姫さま!」


慌てた様子で駆け出した女中は、私の腕を掴んだ。
もう少しで星貝に手が届きそうだったのに。


「危のうございます! こちらへお戻り下さいませ!」

「危なくないわ。ひとつあの星貝を取ろうと思っただけよ」

「いいえ、姫さまは川に入ってはいけません」

「それは、なぜ?」

「そういうものなのです」


私はいつもこの対岸で彦星さまをお待ちしなければならない。女性とはいつも受け身でいなければならない。


「そんなに星貝がほしいのであれば、他の者に取ってこさせます」


そう言って私を引きずるようにして私を縁側まで連れていった。その後ですぐに使いの者を呼び出し、川に入って星貝を取ってこさせている。


「私は自分で取りたかったのよ」

「それはなりません」


つまらないわ。

そう思って、私はひとつ溜め息を零した。