四月一日。高校の入学式当日。
憧れていたブレザーの制服に袖を通す。
ついこの間まで着ていたセーラー服に未練はこれっぽっちもない。


姿見の前でくるりと一回転。
どこか変じゃないか確認してリビングに降りる。


色つきのリップを軽く塗って、髪の毛はコテで整えて、胸元まで伸びた毛先は内側にすこし巻いた。


ずっと男の子になりたいって思っていた。
堂々と野球ができて、
高校生になって甲子園を目指せる権利がある男の子に。


だけどこうして少しでも可愛くなりたいという気持ちが野球部を引退したときからふつふつと再熱したことに少しホッとしている。


……彼方の彼女になりたい。そういう乙女ちっくな甘い気持ちも、ある。


長生きできないけれど強く願ってしまう。


彼方を置いていくのは決まっているのに。


衝動的に彼方へ「大好きだよ」って伝えたくなることもある。
彼方の反応が怖くてとても言えないけれど。
拒絶されたら絶対に立ち直れないし、それに……。


早く死ぬことが決まってるから彼女になる権利さえ私にはないのだから。


「ほら、並んで」