「はぁっはぁっはぁっ」


真っ暗な夜。


月光をスポットライトに、私は夜の街を走る。


裸足で。


下着の上にロングコートという姿で。


ただ闇雲に走る。


遠くへ…。


遠くへ…。


「はぁっはぁっっ!」


呼吸が苦しい。


だけど、逃げることができた安心感が大きいかもしれない。


不安。


それもたしかにそうだけど…。


「ふぅ…っ」


足を止めて、ひんやりした建物の壁に背中をつけ、ズルズルとしゃがみこむ。


手が小刻みに震えている。


12月の寒さのせいなのか…恐怖のせいなのか……。