【一緒に登校した月曜日】
9月はじめの2学期登校初日。
「あーあ、夏休み終わっちゃったねー、明菜ちゃん」
パーマのかかった茶色の髪を指にくるくると巻きながらあたしの隣を歩くのは桜加菜花 (おうかなのは)
「そうだね。でもまぁ頑張んなきゃね」
あたし、美山明菜はようやく馴染んできた夏服のリボンを結び直しながら適当にこたえる。
はぁ…。
やっぱりまだ眠い…。
ドンッ。
「ばーか。んな顔してんなよ」
「ちょっ!もう何すんのよ、お兄…!!」
後ろから背中を押され、前に倒れそうになるあたし。
そんなあたしのバッグをお兄が引っ張り、危機一髪でセーフ。
助けてくれるんだったら最初からそんなことしないでよね…っ。
まぁ助けてほしくないわけじゃないけど。
「ほんっとドジだな、明菜は」
そう言いながらあたしの肩をポンポンと叩いて笑うお兄。
あたしは「もう」と、お兄の手をさっとはらう。
「おはよう」
後ろからした声にドキッとしてしまう。
振り向くと背の高い人。
「よぉ、星夜」
「お、おはようございます!星夜先輩!」
と、そのまま肩を組むお兄と、頭を下げるあたし。
「涼太先輩、星夜先輩おはようございまーす」
菜花もペコりとお辞儀をする。
「ねぇ涼太、今日の練習メニューってなんだっけ?」
「えーっとハンドリングとシュート練かな?多分」
お兄の言葉に星夜先輩は「うわ、マジかー」と空を見上げる。
かっこいいなぁ…。
と、星夜先輩に見とれていると。
「あれ?もしかして明菜ちゃん、星夜先輩に恋しちゃってる感じかな?」
菜花が人差し指をあごに当て小声で言う。
菜花はあたしより背が小さくて可愛らしい。
あたしは別に高いわけではないけど、普通くらいで、菜花よりは高いから、菜花はいつもあたしを見上げながら話す。
その上目遣いが可愛くてモテる理由の1つなんだと思う。
「そ、そんなんじゃないってば!」
あたしはつい大声を出してしまった。
やばい…、聞こえた?
「ん?どうしたの?明菜ちゃん」
空を見ていたはずの星夜先輩は、いつの間にかあたしの方を向いてくびをかしげていた。
菜花のは聞こえなかったけどあたしが急に大声出したからなんのことかわかってないのか。
「なんでもないです!はい!」
「明菜ちゃん顔赤いぞ~?」
菜花は人差し指をくるくると円を描くようにまわす。
もう天使次から次へと余計なこと言ってえ…。
もう…恥ずかし…。
あたしは自分の手で頬を覆う。
あーあついあつい。
「…ふっ」
え、星夜先輩に笑われた?!
「あ、ごめん。つい」
“つい”?
「なんか明菜ちゃんって表情がコロコロ変わるから面白くてね」
「ただバカなだけだろ?なぁ明菜」
お兄うるさいってば…!
舌打ちしそうになるのをぐっとこらえる。
「2人は部活入るの?」
星夜先輩ご話題を変えてくれて助かった…。
部活かぁ。
どうしようかな。
中学の時は美術部だったんだけど、新しいことに挑戦してみたい気もする。
まぁ何がしたいのか本当は決まってたり決まってなかったり…?
「はいはーい、私は吹奏楽部にしまーす」
可愛く手を挙げながら発表する菜花。
菜花は中学の頃から吹奏楽部だった。
吹奏楽部ってただ演奏するだけなのかと思ってたら、実は体力も必要なようでよく外周していて、それを見てびっくりしたっけ。
「へぇー頑張ってね。明菜ちゃんは?」
「あたしは…」
そんなの決まってる。
好きな人がバスケ部なんだもん。
まぁお兄もいるわけなんだけど…。
星夜先輩のバスケをしている姿はとてもかっこいい。
黒のバッシュをキュッキュッと鳴らし、手にすいつくようなボール。
手を大きく広げボールを奪う姿。
膝を曲げボールを手でしっかり持ち、高くジャンプし、指先でボールに回転をかけシュートを決める姿。
「おーい、明菜ちゃん?」
「…あ、まだ迷ってます」
「そっか、じゃあ男バスのマネージャーなんてどう?」
「えぇ?!」
い、今なんて?!
「マネージャー今いないんだよね。前の子辞めちゃって。今空いてるんだけど、どうかな?」
なにその神がかったタイミング!
「おいおい!嘘だろ?こんなバカ明菜にマネージャー?ないない、ありえねーだろ」
このバカお兄…。
星夜先輩の前で…。
「あたし!やります!マネージャー!」
「ほんと?!ありがと!マジ助かる!じゃあ、俺が顧問に言っとくから。じゃあね、勉強頑張って」
「はいっ!!」
好きな人から、なりたかったマネージャーにスカウトされ私の高校生活バラ色の予感!