可哀想だな・・・
そんな風に見ていたら、彼女の走る順番が来た。

スタートラインに立つ彼女の表情が、普段の柔らかく可愛らしい表情から一変していた。

キリッとした引き締まった表情に、思わず俺は魅入っていると

『位置について、よーい。パァーン!』

スタートのピストルの音がした直後、彼女が軽やかに駆け出した。

その姿は美しく、俺は彼女から目が離せなかった。

しかも、彼女はとても走るのが速かったのだ。

見つめた先で、彼女はゴールテープをきった。

走り終わった彼女は順位位置に並びに行く。
そこには先に走った友人が居たのか、会話しながら柔らかく笑う彼女が居た。


普段の姿と、走る姿とのギャップ。

それを見た時、俺は彼女に落ちた。

それ以来、ひたすら見つめ続けた。

どこに居ても彼女の姿を探し、見つけられるようになっていた。

だから、彼女が文化祭で俺達のライブを見に来てくれたのも、気付いた。

楽しみながら、演奏をする間も俺は度々彼女に視線を投げた。

偶に合う視線に、俺は調子を上げて、いつになく高揚した気分でその日の演奏を終えた。

そのステージの先には、目一杯の笑顔で拍手を送ってくれてる彼女の姿。

俺は、その日に更に彼女に落ちたのは言うまでもない。