会長夫婦を前に延々と続くのは
部屋中に轟くような碧斗さんの怒り


それが少しずつ収まると


「陽菜ちゃんごめんなさいね」


憔悴しきった顔のお婆様が頭を下げた


「碧斗さんが迎えに来てくれたので大丈夫です」


お婆様を心配したのに


「傘下の組を一つ潰したな」


ククと笑うお爺様には
碧斗さんのドス黒いオーラは関係ないようで


「虎勢会組長と幹部、焦ってたな」


お爺様としては残念だと呟いたけれど


「ジジイ死にたいのか」


苛立ちをぶつける碧斗さんには
何を言っても聞き入れては
もらえないようだった


「陽菜は本当はまだ入院してたんだ!
用が済んだら帰れ!」


勝手に退院させたくせに
こんな時にそれを盾に取るなんて・・・


一平さんの驚く顔を見ながら
引き摺られるように寝室へ戻った


「陽菜」


広いベッドなのに
碧斗さんの腕に囚われて

窮屈な姿勢で指を絡ませる


「今夜はこのままゆっくり寝ろ」


頭を撫でてくれる心地良さと
碧斗さんの体温を感じながら
ゆっくり瞳を閉じた