碧斗さんの籠に囚われてから
半年ほど経った夏の終わり
「陽菜、今日は出掛ける」
「はい、いってらっしゃい」
いつものように笑顔で見送るはずが
「陽菜も一緒だ」
碧斗さんの声の中に不機嫌さを感じ取り少し不安になる
半年もの間この屋敷から出ていない
諦め気分のあの頃より
今は外に出ることに不安を覚えるようになった
視線を落した顔色の変化に気付いてくれたのか
サッと腕の中へ閉じ込められ
「大丈夫だ」
優しい声が降ってきた
不安な気分のまま見上げると
オデコに一つキスが落ちてきた
たったそれだけで少し緩む口元は
気分さえも浮上させてくれる
「支度しておいで」
碧斗さんの腕の中から出されると
奈美さんに連れられ
ほんの少しメイクを施してもらった
仕上げに碧斗さんの選んだワンピースを着ると不安なまま外へと連れ出された
フルスモークの黒い大きな車の
後部座席に乗り込むと
碧斗さんに肩を抱かれながら
久しぶりの外の景色を見ていた
「陽菜ちゃん
やっと外に出して貰えたね~」
軽い口調の一平さんが振り返って
微笑んでくれたから
「・・・はい」
外に出て嬉しい・・・とも思えないけれど
とりあえずの返事をすると
「一平黙ってろ」
「だって碧斗、あれから半年だぜ?」
「チッ」
隣に座る碧斗さんのご機嫌は
かなり悪いらしくて
また少し気分が下がった