目覚めるとやはり一人だった

分かってはいても・・・苦しい


なるべく感情を表に出さない努力をしながら
与えられることを熟していく


花壇の水やりは
唯一自分から与える作業で

自然と笑顔になる



「すみません・・・
 ジョウロもうひとつ取って貰えますか?」


背後に立っているであろう護衛さんへと振り返った


「・・・っ」


瞬間的に瞬きを忘れた目が開く


・・・碧斗、さん


昇降口付近へ立つ護衛さんの肩越しに見えたシルエットに肩が震えた


悪いことをしている訳でもないのに
緊張して立ち上がる

異変を察知し振り返った付き人が
碧斗さんの存在に気づいて
膝に手を付いてお辞儀をした


「楽しそうじゃないか」


氷のように冷たい表情と
恐ろしく低い声に背筋が震える


なにか気に障ることをしてしまったのだろうか・・・


思いの先に気付けることもなくて

張り詰めた空気が
身体の自由を奪っていた


バタバタと
階段を駆け上がってきた奈美さんに
手を引かれて屋敷に戻される


「私、何をしたんでしょうか」


奈美さんの背中にそっと声をかけると

立ち止まって振り返った奈美さんは



「なるべく組長以外と
 関わらない努力をお願いします」



静かにそう言うと笑顔を作った



寝室へ戻ると
燻る気持ちが徐々に形を現してきた


初めての感情に身体の震えが止まらない

ベッドに浅く腰掛けて
ドアが開くことだけを待っていると


ピーと電子音が響き
ロックが解除され

碧斗さんが姿を見せた