そもそも佐和と女の間に婚姻関係はない
けれども姐として我が者顔で振る舞う傘下の組の娘をそう容易くは外せず
身包み剥がして
追い出すまでのシナリオは
ニノ組が描いてくれた
佐和と立花では足りず
下っ端の組員まで手をつけた情婦のような女の末路への誘導は
夜が明ける頃には
全てが終わった
。
龍神会一ノ組大澤組若頭である俺の
組長の襲名披露は翌月に決まっていた
それまでにあの女だけは
追い出しておく必要があった
思惑通りに放り出された女
事務所で雑務を熟し
家に戻ったのはお昼を少し回った頃
報告を適当に流し寝室へと足を向ける
ロックを解除して扉を開けると
ベッドの中央で眠る陽菜が見えた
クスッと笑うと
ゆっくり近付いた
ネクタイを緩めながら
寝息を立てる陽菜の桜色の頬に触れる
無垢な姿にホッとして
柄にもなく口元が緩む
用意しておいた
淡いピンクのベビードールも
よく似合っている
意図せず男を煽る寝姿に
もう一度クスッと笑うと
陽菜の肩を押して起こした
「ただいま・・・陽菜」
「お帰りなさい」
「ごめんな、一人で」
そう口にすると陽菜の瞳が一瞬揺れた気がした
side out