「裏切ったのか?!」

そう言われる女の子。桐本 美希ちゃん(きりもと みき)


「大丈夫か?」

そう言われ、傷の手当てをされているのが私。桜木 怜奈(さくらぎ れな)



数時間前....いや、数日前に遡る。

私が高校に入学して少し経った頃のことだった。

その高校には全国1の有名な暴走族がいた。

”水神”(すいじん)

彼らと出会ったのは6月の中旬頃のことだ。

水神は2年で私は1年。

普通なら出会うことがないはずなのだ。

しかし、ある雨が激しく降っていた日。

今でもよく覚えている。

授業が終わり、帰ろうと靴を履き替えていた時だった。

水神の姫である桐本美希がいた。多分、傘を忘れたのだろう。

幹部の奴でも迎えに来るのか、ずっと電話をかけているようだが出る気配がない。

何を思ったのか、私は桐本美希に声をかけた。

「どうしたの?」

そう聞くと、驚いた顔でこちらを見た。

「傘、ないの?」

「えっ?あっ、うん。忘れちゃって。えへへ///」

やっぱりかわいい人だ。

「使う?私の傘。」

「ううん。大丈夫だよ!迎えに来てくれるから!」

「でも、水神って今、忙しいんでしょ?」

そう言い放つと、また驚いた顔をした。

「よく知っているのね。」

「クラスの女子が言ってたから。忙しいから、電話に出ないんでしょ?」

「ふふふ。鋭いね!みんな出てくれないんだよぉ!」

可愛く頬を膨らまして、今にもプンプンと言いたげだ。

「忙しいなら仕方ないですね。傘、差し上げます。」

傘を差し出して言った。

「借りちゃったら、あなたが濡れちゃうじゃない?申し訳ないよ。」

本当に申し訳なさそうな顔をした。こんなに素直だからモテるのだろう。

「いえ。折り畳み傘持ってるから。どうぞ。」

「そうなの?ふふ。じゃあ、有り難く借りようかなぁ?」

そう言って、傘を受け取った。それを確認してから、〝では、失礼します。”と言って頭を下げ走った。後ろから〝待って!”と聞こえたが無視だ。

実は、折り畳みなんて持ってなかった。どうしても助けたくなったのだ。

足は速いから追いかけても無意味だ。

これが初めの出会いだった。

その次の日のことだった。
朝、下駄箱で上履きに履き替えているときに後ろから声をかけられた。

「ねぇねぇ。あなた名前教えてよ!」

そう、聞いてきたのは昨日の桐本美希だった。

「名前?桜木怜奈。」

「怜奈ちゃんかぁ!よろしくね!」

「はあ、どうも。では。」

それだけ言って去ろうとしたら、ガシッ!腕を掴まれた。

「待って!屋上来て!」

「いや、今から授業だけど…。」

「えぇー。お願い!頭いいから大丈夫でしょ?」

あんた2年だろう。なぜ私の成績知ってんだよ。

「お願い!」

「はあ、わかりました。行く、行きます!」

「やったぁ!」

こんなに可愛い人に頼まれたら落ちるよ…。

「ほら!行こう?」

「はい…。」


そして、屋上に連れていかれた。

桐本美希が扉を開けた。

ギィー

古い扉でも開けたかのような音だ。

「おい、美希!そいつは誰だ?」

これまた眼つきの悪い男…。

「昨日言ってた子じゃん!」

「あぁ!この子が言ってた子か!可愛いじゃん!!」

こいつはチャラいな。

「なにをしに来た?」

おい。それを私に聞くのかよ…。

「さぁ?あなた方のお姫様に聞いてくださる?」

私は敢えて、お嬢様言葉を使って挑発をした。

「なんだよ!その言い方!」

また別の男がキレた。こいつ短気だな。

「まぁまぁ!この子と仲良くなりたくて!仲間にしたらダメ?」

「だm…!「いやっ!」」

「ふざけんじゃないわよ!!なに勝手なこと言ってんのよ!」

私の言葉に場は一瞬で凍り付いた。それでも私の口は止まらない。

「なに勝手なこと言ってんだよ…!暴走族なんてうんざりなんだよ!なめたこと言ってんなよ?!」

「俺に…この俺に!指図すんじゃねーよ!
お前ら暴走族は死ね!」

私はそれだけを言って屋上をあとにした。

思い出したくない事まで思い出した。はぁ、取り乱してしまった。