結局――。

二次会に行っても、男どもは希と喋りたくて必死で。酒が入れば入るほど、人間本性が出てあからさまになるわけで。
そんな男子たちをフォローしたり交通整理したりする役割が、私に回ってくるわけだ。

希はたびたび私に申し訳なさそうに視線を送って来るけれど、別に希が悪いわけじゃない。

――気にしないで。

心の声を希に送る。

そうして、もう一人――。希みたいな人がいる。彼の隣には、一生懸命に会話をしようと頑張る女子が。

「生田君は、休日とか、何してるの?」

「別に、これといったことはしてないかな……」

「えぇ? そんなこと言って、本当は彼女とか来てたりするんでしょう」

「彼女ねぇ……。彼女ってなんだっけ」

「あぁ、今、はぐらかしたぁ」

おいおい、なんだい、そのやる気のまったく感じられない答えは。

希と違って生田はまったくと言っていいほど愛想がない。

だから、ああやって生田の隣に座るのには勇気がいるはずなのだ。それこそお酒の力を借りて近付いているわけだから、もう少しその気持ちに寄り添ってあげてもいいのに……。

なんて、人のことを心配しても仕方がない。

それにしても、どうして私は気付くといつもこうやって周囲を俯瞰してしまうのだろうか。

まあ、でもそれはそれで楽しいんだけれど。

皆が陽気になっていく様や、心の奥底の本心を曝け出して行く過程を見たりするのは嫌いじゃない。

「内野、おまえ、絶対彼氏いないだろー」

「はぁ?」

私の正面に座る男子、遠山が酔っ払いの目で私に突然言い放って来た。

「だって、おまえが女の顔するのなんて、まったく想像出来ねーし」

ズキン――。
やだ。今、本気で胸がちくっとなった。別に、今更どうってことない発言なのに。

「あんたの前で女の顔する必要なんてないからね。そんなのおくびにも出さないわよ」

「強気な発言だな。なら、おまえでも甘えたりする男いるのか?」

ふん――。どうせ、いませんよ。現実にはね――。


「ばーか。そんなの秘密よ。私の心の中にはいますから」

「ばかはどっちだよ。その歳になって『心の中には』って、笑えないね」


笑ってくれなくて結構よ。

「あんまり、沙都をバカにしないでくれるかな?」

希が、囲まれた男子たちの間から声を上げた。

「沙都はね、無駄に女らしさを振り撒いたりしないのよ。本当に大切な人、本当に好きな人にだけそういう顔をするの」

本当に好きな人、か――。

「さすが希、いいこと言う! 分かったか! 遠山」

「はいはい、分かりましたよ」

「分かればよろしい」


私は、正面に座る遠山の肩を叩いてやった。

分かってる。

同期の男子たちだって、私を見下しているだけじゃないってこと。
同期として、友人として認めてくれている。だから、こうやって憎まれ口を叩き合うのも付き合い方の一つだ。