【おはよう
 朝早くからごめんね
 今日は杏の家に
 泊めてもらうことにしました
 結弦とゆっくり話したくて
 与那星島に16時着の予定です】


石垣島に住んでおる愛莉からそんなラインメッセージが届いたのは、朝の5時のことだった。


オレはリアルタイムで見て、返事をした。


そしたら、愛莉から、【朝苦手じゃなかったっけ? びっくりさ】と可愛らしいスタンプ付きで返ってきた。


朝は苦手だ。


できることなら気が済むまで熟睡しておりたい。


今日はたまたまだ。


なにせ、ひと晩一睡もできずに朝を迎えてしまったのだ。


1秒たりとも眠れんかったのは、生まれてこのかた初めての経験だ。


その証拠に体が鉛のように重たく気だるい。


ところがびっくりするほど目はギラギラ冴えよるし、頭もシャッキリしよる。


オレは朝からずっと昼になってもひたすら、リビングのソファを占領し、寝転がりながらテレビを観続けていた。


でも、どんな番組でどんな内容だったのかも何も、実は目に入っていなかった。


オレは、いろはのことばかり考えていた。


「兄ィニィ、ぼく、遊びに行って来るからね。聞いとる? 兄ィニィ」


「あー、うん」


午前中に虎太朗くんたちと遊ぶと言って、翔琉が出掛けたことも、


「まだここにおったの? プール教室だからさ、行って来るね、兄ィニィ」


「あー、うん」


午後からはプール教室だからと、また翔琉な出掛けたこともちゃんと覚えとる。


そして、今も。


「もー、朝からずっとこう。邪魔なんですけど、結弦」


と掃除をする母さんに文句を言われていることも、ちゃーんと分かっとる。


でも、頭の中は常にいろはのことばかりだ。