えっ…ーーーーー?!






あまりの衝撃に言葉を失った。







「どうしたの?」

つばめちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。

だけど、頭が真っ白になって何も言葉にすることができなかった。


つばめちゃんは私の様子が尋常じゃないのを感じ取るのに人の倍時間がかかる。

彼女が状況を悟った時には、もう私は行動を起こしていた。


「早く見つけなきゃ。遠野さんに怒られる」

「大丈夫だよ。きっと見つかるよ」


他の雑用係のみんなも登校して来て、7人で手分けして探すもなかなか見つからない。

そうこうしているうちにいじめ3人組がバッチリメイクをして登校してきた。


「どうしたの?何か無くしちゃったとか?」

「うわ、それヤバくない?」

「今日本番ですけどお~」

「つうか、何無くしたワケ?」


私たちは黙って俯いた。

30分くらいずっと探しているのに全く見つからないそれを彼女たちに言う勇気は誰にもなかった。


「ちょっと~、だんまり?」

「これだから雑用係は嫌なのよ」

「地味で目立たない上に仕事は完璧にこなせない。ホント、残念な人たち」



アハハハ…ーーー

アハハハ…ーーー

アハハハ…ーーー



いつものように高笑い。



いつものようにうなだれる。





ーーーそんなのもう嫌だ。




私は…




変わるんだ。





「衣装…ーー無くしたの」

「はあ!?」

「バッカじゃないの!?」

「早く探せよ、どぶ犬!!」


3人の罵声が飛び教室が静まり返る。

誰かの唾を呑む音が耳に鮮明に聞こえた。

隣のクラスは占いをやるらしく、射手座の人はどうとか、運命の人は近くにいるとかいないとか言って、たいそう盛り上がっている。


「隠したんじゃないんですか?」

「誰が?」

「遠野さんたちです」

「うちらを疑ってるワケ?どぶ犬の分際で?」

「自分が無くしたくせに人のせいにして。さいっ、てぇー」





我慢できなかった。



バカにして、

いつも私のこと見下して、

何が楽しいの?



今まで蓄積されてきたものが爆発した。


「いい加減にして!!」


ガラガラーーー


私の叫び声と同時に教室のドアが勢いよく開いた。


「何?演劇の練習?」


冷たい声が教室の暗さに溶け込み、負の一体感が生まれた。

当の本人は気にすることなく席に着く。

その様子を見て、凍りついていたクラスメイトたちが一気に動き出した。


私は遠野亜子、宮脇円香、夏川樹里をじっと睨み付けた。



今日こそは絶対に、絶対に見返してやる。