「ウエイトレスの衣装試着する人―!」


「ねぇ、誰かガムテープ貸してー!」


6月半ば、文化祭の準備期間に入ると、放課後の教室が一気に賑やかになった。


みんな居残って看板作りをしたり、衣装合わせをしたり。


うちのクラスは焼きドーナツのお店を出すことになって、私は色々役目がある中で、調理係を担当することになった。


「蛍もウエイトレスやればよかったのに~」


「ううん、私は裏方でいいよ」


「なんで~、もったいないよ。絶対あの衣装蛍に似合うって」


加奈子ちゃんはそんなふうに言ってくれるけれど、話すのが苦手な私は花形のウエイトレスではなく、裏方の調理係を迷わず選んだんだ。


ただでさえウエイトレスは人気があったし、接客なんてうまくできる自信がなかったから。