ーー翌朝。


「おはよー、澪ちゃん」


登校して教室の前で待ってましたとばかりにリイちゃんと、きっとリイちゃんに連れてこられたのであろう入江くんが窓の外を見ながらこっちに手を振った。


「おはよ」

「ねぇ澪ちゃん。ちゃんと宿題やった?」

「昨日ってどの教科が宿題出てたっけ?」


はて? なんて首を傾げると、リイちゃんがハムスターに変身した。


「ちがーう! リイが出した宿題のことだよ」


ああ、そっちね。


「ちゃんと読んだよ、リイちゃんオススメの漫画」

「っで、どうだったの?」


リイちゃんはキラキラとした瞳で私を見つめてる。可愛らしく両方の手で拳を作り、口元に寄せながら。


「うん、まぁ……なるほど、って感じ?」

「なにそれー!」


リイちゃんの求めてる答えではないと分かっていながらも、他に表現のしようが無かった。


「だって、あんな展開実際にないでしょ。急に俺の女になれって言って無理矢理キスするとか」


えー、って感じ。それでなんで付き合うってなるのかも展開についていけなくて、完全に置いてけぼり感を食らってしまった。


「えー、あそこはキュンキュンする場面だよぅ!」

「えっ、なんで⁉︎」

「だって学校一の優等生が急に見せた裏の顔、しかもあんなにカッコいいんだよー」


言いながらリイちゃんの瞳にはハート型が見える。


「えー……なんか恋愛漫画って、読むの難しいんだね」

「ぷっ」


真剣にそう言ったのに、リイちゃんの隣で静かに聞いてた入江くんが、吹きだした。