女からサインをもらったあたしは自室に戻ってきていた。


こんな紙切れ1枚で本当にあの女は死んでしまうんだろうか?


考えてみても、よくわからなかった。


あまりに現実から離れているし、人が死ぬなんてこともよくわからない。


死にたいのは、あたしだったのに。


それなのに、今あたしはあの女を殺そうとしているのだ。


それはとても不思議な感覚だった。


「死ぬわけないか。でも、あの女が一億円を持っていることはわかった。それだけの大金があれば、あたしはここから逃げることもできる」


どこか逃避行をするのだ。


あたしの知らない土地へ、あたしの事を知っている人がいない土地へ行きたい。


すべてをやり直すんだ。


あたしはそう考えていたのだった。