4月17日。


まだ薄暗く太陽の見えない時間。


電気のついていない小さな部屋の中、パソコンの明かりで男の姿が浮かび上がっていた。


黒い服を着て、黒い帽子を深くかぶった男の顔は、しっかりと確認することができない。


それでも男だと分かったのは、暗闇に浮かんだ体格のよさからだった。


男は口角を上げ、ニヤついた表情でマウスを動かす。


画面上では白いポインタがまるでダンスをしているようにクルクルと踊る。


しばらく画面上でポインタを動かしていた男の手がピタリと止まった。


ポインタは戸川良(トガワ リョウ)、松崎雪(マツザキ ユキ)と書かれた名前の上で静止している。


静かな時間が流れていた。


窓の外からは何も聞こえて来ない。


ここが山の奥だということを嫌でも感じさせた。


しかし男はこの物静かな時間が何よりも好きだった。


精神が研ぎ澄まされるような感じがする。


自分のやっている行為が神にまで届くんじゃないかと、むしろ自分自身が神になってしまったのではないかと勘違いしそうになる。