「あたしがあんたと過ごしてる、この1ヶ月の間に、なべっちには彼氏が出来てたのよぉ~~!!!」


今日も屋上で、その男と過ごしている。

でも今は放課後じゃない。

なべっちの奴、あたしがこいつにコキ使われている間に、隣のクラスの男の子と付き合うことになっていた。

しかも今日から、お昼休みも一緒に過ごすんだと~~!!!


「だからって、俺を呼び出さないでよ」


面倒くさそうに、陽だまりの中に座っている安堂くんが言った。


「…彼氏が出来ないおまじないをつけたのは誰よ」

「それは本人の力量不足ってやつなんじゃない?」

「ちょっ…! あんたの…、あんたが! つけたこの痕のせいで…っ、痕を隠す為に、シャツの第1ボタン締めてるんだからねぇ!? 開けてたら今頃彼氏、出来てたかもしれないんだからねぇ!!??」

「どんな理屈だよ、それ」


怒りに震えるあたしに、安堂くんは呆れたため息をつく。


「スキだらけのバカな女なんて、男が本気になるわけないじゃん」

「あんたはね!清純美人教師が好みだもんね!!」

「……、」


安堂くんが黙り込み、そこで自分の発言にハッとする。


1ヶ月前。

安堂くんは美人教師として有名な、美坂先生にフラれたばかりだ。

普段の教室では、何もなかったかのように振る舞ってるし、英語の授業も平然と受けている。

だけどそれがフリであることをあたしは知っている。

カッコイイって有名で、彼氏にしたい男No.1の安堂くんが、先生のことを本気で好きだった。

あたしの首筋に、涙を零した。

普段の安堂くんからは想像つかないくらい、弱々しく瞳を揺らして。

なのに、あたしってば……。