「あれ、竹ちゃん」

 竹ちゃんの口調をまねて言ったら、竹ちゃんが二カッと笑った。

「残業?」
「うん。竹ちゃんも?」
「おう。今営業先から帰ってきたとこ。これから報告書を作成せにゃ~」

 竹ちゃんがだるそうに言いながら、自動販売機に硬貨を入れた。ガコンと音がして、取り出し口から同じブラックコーヒーを取り出した。

「入社してからもう一年も経つんだね~」

 私は言って、缶コーヒーのプルタブを引いた。竹ちゃんが私の隣に座って言う。

「あー。そういや今日は四月一日だもんな」
「うん、エイプリルフール」

 私が缶コーヒーに口をつけたとき、竹ちゃんが私に流し目を送った。黙っていれば色気すら感じる切れ長の二重の目が、じっと私を見つめている。

「あのさ」
「うん」
「俺がおまえのこと……好きって言ったらどうする?」
「ぶっ」

 竹ちゃんの突然の言葉に、私はあやうくコーヒーを吹き出しそうになった。竹ちゃんはコーヒーの缶を両手で握って、真剣な目で私を見ている。その眼差しに、鼓動がトクトクと高くなり始める。