「十夜、遥香さんは?」


「今の所問題ない」


「……そっか。何も無ければいいんだけど……」


遥香さんはと言うと、実は今日、此処には来ない。


理由は“毎日鳳皇に来れない”と言った時と同じ理由で、家で習い事があるから。


十夜は遥香さんの事情を知っているから、それを聞いた時一つ返事で承諾した。


多分、此処に居るよりかは家で居る方が安全だと思ったのだろう。


けど、万が一の為、一人だけ護衛をつけておく事にした。


因みに、その護衛は充くんではない。


充くんは数十人を従え、此処であたしを護ってくれる事になっている。



「大丈夫だ。奴等も家の中までは乗り込んで行こうとはしない。 それに、奴等は遥香が家に居る事すら知らないだろうからな」


「……そうだよね」



十夜の言う通りだ。


奴等は遥香さんが家に居るという事を知らない。

だから狙われる心配は無いんだ。



「お前は一人で大丈夫か?」


「あたし?うん。あたしは一人で大丈夫だよ」



心配そうな表情であたしの顔を覗き込む十夜。


そんな十夜にコクン、と小さく頷くと、平気だからとでも言う様にニッと笑って見せた。


すると十夜はフッと笑みを零し、あたしの右肩を優しく抱き寄せる。


「何かあったら直ぐに充を呼べ」


そう耳元で囁いた十夜に「うん、分かった」と返事し、そっと右肩に頭を預ける。