「っもう!十夜の馬鹿!あたしも仕返ししてやる!」


余りの恥ずかしさに両手で顔を隠し、思いっきり睨んでやるとアーンと大きく口を開けた。



「おい、待て。なんで口開けんだよ。お前、もしかして噛む気じゃねぇだろうな?」


「そのまさかでーす!」


「……有り得ねぇ」


十夜を捕らえようと手を伸ばすと、するりと交わされる腕。


それを何度も繰り返すあたし達。



甘いかと思えばこんな風にふざけたりするあたし達はまだまだラブラブカップルには程遠くて。


けど、あたし達はこれでいいと思った。


無理してラブラブになんかならなくてもいい。


あたしはただ一緒に居るだけでいいんだ。


これ以上は望まない。


だって、隣に居るだけでこんなにも幸せなんだもん。





「十夜、明日怪我しないでね?」


「あぁ。気を付ける」



だから神様。

早く抗争を終わらせて下さい。


あたしは皆と平穏に暮らしたいの。


喧嘩なんてせず、笑ったり喧嘩したり、そんな平穏な毎日を送りたい。


完全には無理だろうけど、それでもこの抗争が終わったら少しは平穏な暮らしが出来るだろうから。



だから、祈るよ。


誰も怪我をしませんようにって。

奴等に勝てますようにって。


ここで祈りながら待ってる。


帰ってくるまでずっとずっと祈ってるから。