【隼人side】
「矢澤君、なかなかいいペースで回復してるね」
「じゃあ来週くらいにはマウンドに立てそうっすか?」
「かもな~。あははは」
そんな冗談を医師と交わしながら額に汗する俺は、今病院のリハビリ室で医師の指導のもと、リハビリを受けている。
ギブスが取れたのは、予定より10日も早かった。
家に居たら無理をしそうで、なるべく歩かなくていい環境をつくるために1週間入院し、その後も自宅ではトイレ以外は動かない安静生活を送っていた。
骨を強くするためにも、カルシウムも積極的に摂取して、体力を維持するためにも栄養のバランスのいい食事を心がけてる。
それでも動いてないから体重増加を気にする俺のために、カロリーの計算をしながら食事を作ってくれてる母さんには、すごい感謝だ。
この程度の骨折なら家でゆっくりリハビリするのが普通らしいが、俺にはまだ捨てきれない夢があるから……
今日は決勝戦。
試合開始は午後1時。リハビリを終えたら、俺も球場へ駆けつけるつもりだ。
テレビで試合の様子は見ていたけど、決勝戦はこの目に焼き付けたい。
久々に青翔メンバーにも会える。
みんなのプレーが見れるのが楽しみでしかたない反面。
凌空との対面に、そわそわして落ち着かない自分もいる。
いろんな興奮から、昨日の夜はほとんど眠れなかった……。
「ふわぁ~あ~……」
さっきからあくびが止まらない。
「でけえあくび」
「……っ」