事故から2日。


隼人と凌空。

ふたりのエースが突然姿を消し、最初こそ困惑していたグラウンドもいつもの落ち着きを取り戻していた。


取り戻さなきゃいけないんだ……。


青翔の夏は終わったわけじゃない。


青翔の実力は、隼人を失ってもあまりある。


甲子園への夢を、誰ひとり諦めてないから。


みんなが色んな想いをこらえて、目の前の大会のために必死に闘っている。




それを見ていたら、下なんて向いていられないよ。


つらいのは変わらないけど、あたしは青翔野球部のマネージャー。


頑張れ、あたし!


自分に気合を入れて、あたしはグラウンドに飛び出した。




「───ナイスピッチ!!」



向井くんを中心に、今日もグラウンドには活気あふれる声が響いていた。







県大会の開会式が明後日に迫ったこの日、あたしは隼人に呼ばれた。



『持ってきてもらいたいものがある』


そう言われたんだ。


しっかり治すためには最初が肝心らしく、無理に動くことがないように、隼人は1週間の入院を選択した。


部活終わりだと面会時間が過ぎちゃうから、練習中1時間だけもらって隼人の病院へ。


4人部屋の扉を軽くノックしてから入り、手前の患者さんに会釈をして奥の隼人のベッドに近づくと。



「おう、結良」



両腕に持ったダンベルを動かしながら出迎えられた。