救急車で運ばれた隼人に付き添い、あたしと凌空も病院へやって来た。


隼人はすぐに検査に入った。


転落事故だから、脳や内臓にダメージはないかなど、精密検査が必要みたい。


電話で連絡して駆け付けた隼人のお母さんも一緒に、待合室で待っていたんだけど……。





「亀裂骨折……?」



検査が終わり、あたしは医師の告げた言葉を理解するのに時間がかかった。


打撲もあるだろうし、それなりに静養が必要なのは分かってた。


でも、県大会開幕まではあと5日。


実際の試合まではシードもあるからその4日後。


時間は十分あると思ってたのに。



「嘘っ……だろ……」



凌空も言葉を詰まらせるように、骨折となれば話は別。


それじゃあ、1週間で完治できないじゃんっ……。


胸が引き裂かれる思いがした。



「普通なら腕や足の骨の1本2本折れていても不思議じゃない事故でしたよ。打ち所が悪ければ、命も危なかったかもしれない。よほど日頃から体を鍛えてたんでしょうね。落ちた時に受け身も取れていたんでしょう」



呆然と立ち尽くすあたしたちの前で、医師はこの程度で済んだことが奇跡だと言った。


脳や内臓の検査でも異常はなかった。


ただ、左足の甲に一か所、亀裂骨折が見つかったと。



「あのっ、来週から野球の県大会が始まるんです。投げられますよね!?」



凌空は、医師に食らいつく。


骨折と言われてるのに引き下がらない凌空は、少し錯乱状態。


あたしだって同じ。


なのに医師は非情にも、厳しい宣告をした。