「隼人はまだ来てないのか?」



練習が始まって1時間が経過したころ。


隼人とミーティングをすると言っていた広田監督がグラウンドにやってきて、全体を見渡して首を傾げた。



「見てないので、まだだと思います」


「遅くないか?もう30分前にはミーティング終わってるんだが……」


「え……」



気になって室内練習場やランニングコースを探しに行ってみたけど、どこにもいなかった。


部室に行き、隼人のロッカーを開けると。



「……ない」



制服やバッグはなく、部室にきた形跡はやっぱりない。


念のためスマホもチェックしてみるけど。



「来てないか」



連絡も入ってない。


そのときちょうど凌空が部室にやって来たので聞いてみる。



「あ、凌空。……あの、隼人見てない……?」


「……しらねえよ」



……だよ……ね。


隼人の名前を出したことが気に食わなかったのか、派手に音をたててロッカーを開け閉めすると、タオルを手にそのまま部室を出て行った。


あの時隼人を庇ったあたしにも、凌空は同様の態度を取ってるんだ。


ちゃんと話しをしなきゃなって思ってるんだけど……。



それよりも今は。



「ほんと、どこに行っちゃったんだろう……」



隼人が部活をサボるわけないし。


と、グラウンドの端に目をやって。


あれ……?


今日も部活を見学に来ていた花音ちゃんの姿が消えていることに気づいた。


花音ちゃんと隼人がいない。


関連性なんてどこにもないのに、それがあたしの胸をざわつかせて。


あたしの足は自然と校舎へ向かっていた。