玄関を出たあたしは、ひとつ大きく深呼吸。
……ビックリしたな。
まさか、凌空がこっちを見てるなんて夢にも思ってなくて。
軽くパニックになっちゃったよ……。
自分でも、どうしてあの時カーテンを開けたのか分からない。
ただ、なんとなく引き寄せられるように窓辺へ向かっただけ。
凌空はいつもああこっちを見てるの……?
ううん。たまたまだよね。
そんなことする理由も見つからないんだし。
気まぐれ……なんて言われたキスのことは、もう忘れなきゃ。
あんなにハッキリ言われちゃって、それを気にしてるあたしの方がバカみたいだし……。
凌空の話を聞く限りでは、花音ちゃんとはすごくうまくいってそう。
だったら、あたしに敵意なんて持たなくてもいいのに……。
"凌空は花音ちゃんの彼女"
言い聞かせて、少しだけ、胸がズキンと痛んだ。