【凌空side】


───シュ……。


今夜も、風を切る音が聞こえてきた。


カーテンを開けると、窓の向こうで隼人が投球練習をしているのが見えた。



「今日もやってんなー」



毎日毎日すげーっての。


居候してる時には有無を言わさず付き合わされた。


毎日の儀式だーとか言って。


朝と放課後の練習だけでもキツイのに、マジ勘弁だった。


居候を解消して良かったことは、自主練に付き合わなくてもよくなったことだな。



部屋には、もうひとつ窓がある。


その窓の隣は……結良の部屋.。



なんとなく窓辺に向かい、いつもは開けることのないカーテンをそっと開けてみた。


明かりがついてる。


結良が部屋に居るってことだ。



ドクンッ。



それだけで、胸が熱くなる。


……ダメだよな、俺。


結良は隼人の彼女なのに。


俺は手塚の彼氏なのに。




住宅密集地だから、隣の窓との距離は1メートル程度。


さすがに行き来は出来ないけど、窓越しに会話することはよくあった。


灯りのついた窓から昔のことを懐かしく思っていると。



「うおっ……!!」



カーテンが開き、結良の姿が見えたから驚いた。