【凌空side】
「凌空、俺が受けるか?」
「いや、今はいい。ありがとな」
キャッチャーをかって出てくれたチームメートの言葉を断り、俺はひとり、もくもくとネットに向かってボールを投げた。
渾身の力を込めて投げたボールはネットを大きく揺らし、威力をなくしてゆっくりと落ちていく。
……これでいいんだ。
隼人に言ったことはウソじゃない。
本気で……心の底から、隼人におめでとうを言ってやった。
俺がちゃんと祝福してやんなきゃ、隼人はずっと俺に遠慮して過ごすことになるだろ。
きっと、俺が帰ってきてからずっと不安だったはずだ。
俺が結良を好きだと気づいている隼人にとって、俺は脅威でしかなかったんだろ?
つき合ってることを隠してたのって、そういうことだろ?
そのくらいわかるっての。
悔しくないと言ったら……ウソじゃねえけど。
俺でも隼人でもない、知らない誰かを結良が選ぶくらいなら。
……隼人で良かった。
結良も好きだけど……。
同じように隼人も大事だから。
俺は……身を引くしかないんだ。
隼人のモノになった結良を俺が思い続けても
……誰も幸せにはならねえ……。