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「いいか?手加減は無しだからな?」


「いいけど後で文句言わないでね?」


「言わねぇよ!俺だってあれから強くなったんだからな!な?透」


「よく言うよ。リンに鉄パイプ振り下ろされてビビッたくせに」


「オイッ透!余計な事言うんじゃねぇ!」



ちょっと、いつになったら始められんの。


あたしを無視して小競り合いをし始めた慎と透。


はぁ……。落ち着くまで待つしかないか。



掴み合いを始めた二人から視線を逸らし、周りを見回す。


壁に沿うように横並びになっている獅鷹の人達は、殆んどの人が昔から知っている人達ばかりで、目が合うと嬉しそうに笑って手を振ってくれる。


そんな中、今年入った人達はこれから始まる“遊び”に興味津々のようだ。


そりゃそうだよね。

よく知らない人間が次期幹部候補と言われている慎と透と“手合わせ”しようとしているのだから。




何故こんな事になっているのかというと、それは遡ること数時間前。


あたしは獅鷹幹部と鳳皇幹部の皆で獅鷹の倉庫へ来た。


理由は獅鷹メンバーに鳳皇と同盟を組んだ事を正式に伝える為。


倉庫に来てすぐ鳳皇と同盟を結んだ事を獅鷹メンバーに伝えると、両幹部は二階の幹部室へ移動。


あたしも少しの間部屋に居たけど、貴兄達の会話がちんぷんかんぷんになってきたから逃げてきた。