家から千年桜までは意外と近く、十分もかからなかった。




千年桜の下には黒い人影があった。




あたしはそっと近づき声をかける。



「ここはユウの嫌いな場所なんだね」



その人物はユウ。



ユウはしゃがみ込んで手を合わせて拝んでいた。




そこはボコッと膨らんでおり、お墓のようなものがあった。




あたしはユウの隣にしゃがみこみ同じように拝む。




「……親の月命日なんだ」




風があたし達の間を通る。



「そう、なんだ」



ユウの悲しそうな横顔を見ると、あたしはそれしか言えなかった。