第1章ゼロとの出逢い




九月半ば。肌寒くなってきた風が頬に当たる。




「またあいつだ!!銀色の髪の女だよ!」




町に怒号が響き渡った。




「はぁはぁ……!」




坂道を駆け上がり路地に滑り込む。




「くそ!どこへ行った!?」


「またやられたのか?あんな子供に」




ごみ捨て場の陰に隠れると近くから話し声が聞こえてくる。



荒々しい男の声だ。



「少し目を離した隙に食いもんを盗られたよ、ちくしょう」



私は手で持てるだけ持ってきたパンを腕に抱える。




路地の壁に背中を付けると
ふぅ、と息が漏れた。




もうここ何日も何も食べていない。




盗もうとして捕まって、殴られたりしたこともあった。




この町では健全な生活をしている人もいるけど、家を持たない人も多くいて犯罪があちこちで起こっている。



私は生きるために約一年前から“悪行”を重ねている……。


盗みを働かなければこの町では生きていけない。



ここ、闇町と呼ばれるこの国の底辺では
まともな仕事なんか十六歳の子どもにはくれないのだ。



「くそ…!次捕まえたら今度こそ奴隷屋にでも売り飛ばしてやる!」



町の人々がそう、言っているのが聞こえた。




私は捕まるわけにはいかないんだ。

待ってる人も…いる…。




私は気づかれないように路地を後にして町を一望できる丘に建つ、自分の家へと走った。




銀色の髪が風になびいた