「……地域交流会の手伝い、ですか?」

「うん、そう。まあ地域交流会とは銘打ってるけど、要はクリスマスパーティって感じかな」

一枚のチラシと、その先に座る古川先輩のスマイルを交互に見て、私ははあと容量の掴めないのが現れたような気の抜けた返事を返した。

12月に差し掛かり、3年生は受験に向け一気に追い込みをかける時期になった。

が、前に座る古川先輩に受験の二文字を突き付けたところでノイローゼ気味の表情になるわけではない。

古川先輩はいわゆる優等生中の優等生。
先生たちのお気に入りで、何か行事ごとが起これば先生たちの推薦で古川先輩がリーダーとして率いることも多く、その上生徒会長までこなしている。

真冬くんとの違いを挙げろと言われたら、この辺だろう。容量も愛想もいい古川先輩とかたや容量も愛想もいいが性格が悪いうえ、面倒事が嫌いな真冬くん。

それに風の噂で聞いたけれど、先輩は県内屈指の有名大学から直属に推薦を受けたらしい。こうして部室を赴いて、余裕そうにしているあたり、その噂は本当なんだろう。


「えと、それが……?」

「単刀直入に言うとね、人手が足りないんで手伝ってほしいんだ。お願いできる?」

「古川先輩の頼みなら、断る理由はないですけど……」

「嬉しいな。流石は琴吹ちゃん」

立ち上がった古川先輩は、含みのある笑みを浮かべて私の頭を優しく撫でる。

恥ずかしい反面、私には兄がいない分撫でられるのには慣れていないから、少しだけ嬉しかったりする。