美味しいディナーを満喫した帰り道。
最寄駅で電車を降りた私は、徒歩で15分の自宅に向かって、のんびりと歩いていた。
自宅近辺は治安が良く、夜の一人歩きでも大して不安は無い。
幅の広い道路沿いにはコンビニが二軒有るし、そこから家に向かう少し細い道に入ってからも、等間隔で立つ街灯と道路沿に建つ家々の玄関灯のおかげで、視界は良く安心出来る。
歩きながら、沙希と美野里の言葉を思い出していた。
『とりあえず、付き合ってみたら?』
あまりに適当な提案だと思ったけど、二人は結構真剣だった。
『最初はそれ程好きでもなくても、最終的には凄く好きになったことがあるよ』
『相手をよく知らない内から拒否するのはどうなのかな?』
それぞれ沙希と美野里の台詞。
分かるんだけど、でもそう簡単には実行出来ない。
だって私は二人とは違う。
何しろ彼氏居ない暦25年だ。
恋愛経験値で言ったら同じ年の二人に大きく遅れをとっているから、二人と同じ考え方なんて出来ないわけで。
あーあ、と溜息を吐きながら街灯に照らされた夜の道をトボトボと歩く。
家まであと半分くらいの距離の所で、前方から二つの人影が近付いて来るのに気がついた。