雅也くんのことなんてお構いなしに、私の腕を掴んでどんどん進んでいく涼介くん。



後ろ姿からは涼介くんほ表情は見えなかった。





「涼介くんっ、痛いよっ!…ど、どうしたの?」



すると進みながら、ちらっと私のほうを見た涼介くん。


その視線はなお、私に刺さる。




「お前わざとなの?計算なの?」



誰もいない廊下に響く声。



言葉の意味も分からなくて、涼介くんの気持ちもわからなくて。情けなくて、何も言えないでいた。




「…そんなわけねぇよな。」




私に聞こえるか聞こえないかくらいに、弱々しくつぶやかれた声に戸惑ってしまう。


掴まれる手に伝わる熱、いつも追いかける背中、香ってくる涼介くんの香り。






全てが擽ったい。