浅野さんとは、あれからすべての仕事を終えると店先で別れた。

家まで送ると言ってくれたけれど、私は自転車だったし、疲れているのにそんな無駄足をさせるのはさすがに申し訳なかったから。

結局、別れる寸前までドキドキが止むことはなく、ふわふわとした気分のまま家に帰った。


あのままだったら、絶対……キス、していたよね。

ありえない。付き合ってもいない人と、ましてや向こうには彼女がいるのに、そんなことしようとしちゃったなんて!

浅野さんも何考えてんのよ。あの後も、何事もなかったかのように普通だったし……大人だからなのかもしれないけど。


もう自分が何を考えていて、どうしたいのかもわからなくなる。

自己嫌悪に陥りそうになり、私はしばらく頭を悩ませながら過ごしていた。


しかし、クリスマスの十日前、そんなことで悩んでいられなくなる事態が起こる。


「タ……タケちゃんが、店を閉める……!?」


夕飯を食べている最中、重そうに口を開いたお父さんから耳を疑うような事実が飛び出し、私は唖然とした。

今日も元気がなかったお父さんを心配してはいたのだけど、まさかそんなことになっていたとは……。